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『ラブライブ!サンシャイン!!』、あるいは楕円の構造(前編)

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先日、『ラブライブ!』に続くコンテンツ『ラブライブ!サンシャイン!!』のアニメ化が2016年夏予定と発表され、あわせて『サンシャイン!!』の1stシングル『君のこころは輝いているかい?』のPV全編も無料公開される運びとなった。

 

このPVでもっとも衝撃的だったのが、監督のクレジットに京極尚彦の名前がなかったことだ。京極は『ラブライブ!』のPV、TVアニメ、劇場版とすべての監督を務め、脚本家の花田十輝とともに『ラブライブ』の映像作品のまさに屋台骨であった。『サンシャイン!!』のPVの監督は酒井和男*1であり、おそらく夏からのアニメも酒井が監督をすることになるのだろう。

ラブライブ!』を見てきたのは京極・花田の仕事に惹かれていた部分が多々あったので、この人事は非常に心配だったが、実際にPVを見てみると、成る程この変更にも合理性があったように思う。

よってここではまず酒井の演出の特徴について彼の絵コンテ回を参考に概観しつつ、「君のこころは輝いているかい?」PVの演出に目を向け、更にはそこから伺える『サンシャイン!!』の方向性についても話を進めたい。

後編はこちら

 

 酒井和男の演出

酒井の演出スタイルは、『ラブライブ!』絵コンテ回を見る限り、空間をレイヤーに分割することをその特徴としていた。アニメーションは文字通り二次元であり、そこからどう空間性を生み出し、さらにはドラマを創出していくかはひとつの課題である。酒井はそれを、あえてわかりやすく画面を何層にも分割し、前景・(中景)・後景と重ねることで処理している。

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(上3枚は1期7話「エリーチカ」、下2枚は2期11話「わたしたちが決めたこと」)

この手法は、ご覧のようにギャグシーンと相性がいいようだ。とはいえ、シリアスな場面でも同様の空間構成が見受けられる。

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(2期11話)

これは、グループを存続するかどうかの議論がメンバー内でまとまらないまま練習に突入したで場面である。ただの練習風景にすぎないのだが、ランニングの順序を用いてレイヤー化することで、各メンバーが存続問題について別々の思案を抱いていることを酒井は描写してみせた。

 

そして、酒井の面目躍如の演出が以下のシークエンスである。

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(2期11話)

ここでは、高坂穂乃果(右)が所属するアイドルグループμ’sへの加入を無邪気に希望する絢瀬亜里沙(中)と、その願いに対して曖昧な返事しかできない高坂穂乃果、そして亜里沙と同じ立場でありながら姉の心境も理解できる妹の高坂雪穂(左)、その三者三様の思いの違いを巧みなレイヤー分割によって酒井は表現する。

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穂乃果と亜里沙・雪歩の立場の違いは、居間と廊下という完全な別空間にそれぞれを配置することではっきりと区切られる。二枚目の上空からのショットは、まさに両者が完全に別の立場にいることをこの上なく示しているだろう。

では、亜里沙と雪穂の微妙な差異は?これを描写したのが以下のショットだ。

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同じ立場に位置しながら二人の思いが微妙に異なることは、畳の縁が画面を分割することで表現される。酒井的な前景・後景のレイヤーに加え、更に画面を横方向にも分割させることで同床異夢を表現することに成功している。

このように、酒井のレイヤー演出は、ギャグのみならず、大きな演技や台詞では表現しづらい思いのすれ違いや立場の微妙な差異を表現するのにも優れている。

 

ちょっと長くなってしまったので、まだ『サンシャイン!!』PVにも表題の楕円の議論にも辿り着けていないが、一旦ここまでで前編としたい。

後編へ続く

 

 

 

*1:ラブライブ!』では1期7話と2期11話の絵コンテを担当