Hearthstone日本語版についての雑感

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 Hearthstone日本語版リリースが発表された。あまりにもダサいレイアウトはさておき、Blizzard社のゲームの日本語版はDiablo2以来の15年ぶりということで、画期的な出来事であることは間違いない。ゲーム内で必要な英語スキルはゼロに等しいのだが、日本においてはあらゆるジャンルで「日本語版」への需要はものすごいので、英語ということだけで敬遠してきた層を取り込むことができるだろう。

 とはいえ、若干遅い、というのが本音である。既にリリースから1年半が経ち、全くゼロから始めようとすると少々キツい。環境に適応したデッキを構築するにはAdventureモードの購入(2500円〜5000円)がほぼ必須で、更にカードパックを一定量買うとなると、一葉か諭吉とGOOD BYE 夏男せねばならない。

 ただ環境が加速しているので、ちょっと前みたいに高価なLegendaryカードが何枚も必要ということもなく、最初にいくらか投資してしまえばむしろ参入しやすい、とも言える。まあフリーミアムゲームなのに、まず数千円払って下さい、というのがガチャ漬けの日本製ソシャゲに飼いならされた日本の顧客に通じるかどうかは疑問だが…(カードゲームで数千円払えば参入できるというのは破格なのも確かなんだけど)

 

 さて、今回の日本語化で一番恩恵を被るのは中高生だろう。英語は苦手で金はないが、ネットに繋がる端末と時間は腐るほどある。MtGのプレイヤーも中高生が多いはずだし、Hearthstoneが流行する土壌は既にある。

 Hearthstoneに限らず、eSportsで最も必要なのは時間だ。現に日本初プロプレイヤーkoronekoさんは高校生だし、Blizzcon日本地区予選優勝者Knoさんも大学生で、ほとんどのトッププレイヤーは学生身分だと思われる。他のゲームでも大会出場者は慨して、学生風か、まぁお仕事してないよね…という風貌をしている。同じBlizzard社のWorld of Warcraftサウスパークが取り上げた時(Blizzard全面協力のもとで!)、騒動を引き起こすNo.1プレイヤーはBlizzardの社員によって”someone here who has absolutely no life”とまで呼ばれた。*1 no life はちょっとアレだが、今回の日本語化により、この国の若き才能が芽生えることを祈る。

 

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“someone here who has absolutely no life”

Season10 Episode8 “Make Love, Not War Craft”(エミー賞を受賞した傑作エピソード。必見!)

有志により日本語字幕がつけられた海賊版

日本語版リリースについての記事

新規プレイヤーが抱える現状の問題点についての開発者の見解についての記事

*1:Blizzard社員同士の“I don’t have a World of Warcraft account. Do you?””No, I have a life!”というやり取りもある。自社ゲームに対してなんてことを!(訳:「俺はWoWのアカウントを持ってないぞ。お前は?」「俺もだ。まっとうな人生を生きてるからな!」)

ゲームプラン、あるいは出口戦略を持つこと


 なんとかランク5には到達できた。…けどMech Mageではどうしてもランク6-7付近で止まってしまったので、最後はAggro Paladinで上げた。他にもLiquid HearthのMeta Report上位だったMidrange DruidやTempo Mageも試したけど、大体Mech Mageよりも勝率は下だった。

 もちろんプレイングミスもあったが、それを差し引いてもメタ的には下位のはずのAggro Paladinより勝てなかったのか。これについて自分なりに考えていたこととよく似たことを先の日本大会優勝者Knoさんがインタビューで語っていた。

――ところで、『Hearthstone』で強いプレイヤーはどこが違うのでしょうか?
Kno: 誰かが以前「強い人とそうでない人の違いは、ゲームプランを持っているかどうかだ」と言っていたことがあります。「1つの盤面を見ての最善手」は誰でも考えられるのですが、終始「この方法で勝つ」というプランを持って戦える人はなかなかいません。違いはそこでしょう。

「【特集】カードで世界に挑む東大生―『Hearthstone』日本代表Kno選手インタビュー」

 ゲームプラン、あるいは最終的にどうやって勝つか、をちゃんとイメージして、そこからトップダウンで今の行動を決める。可能な選択肢が2つあり、その場での最善手が選択肢Aであっても、デッキの勝利プランにより適しているのは選択肢Bである場合、後者を選んだ方が勝率は上がるだろう。Aggroの勝利プランは誰が相手でもひたすら顔を殴るという本当にシンプルなものだからゲームプランに沿う行動をとり続けるのは簡単だけど、Midrangeのデッキになると途端にそこがぼやける。しかも相手によって勝利プランが変化することもままあるので、更に難しくなり、結局一貫した行動をとれなかったのが勝率が低かった要因だろう。

 以前、ひとくち新聞でkoronekoさんが質問者にかなり辛辣な解答をしていたが、それも似たような話だった。そこだけ引用すると

【A】質問に "相変わらず勝てません。今日も3勝12敗でした。未だにPatronの強さが分かりません。ここまでくると根本的な考え方が間違っているのかと思います。" とありましたが、"適当に低コストミニオンをキープするくらいです。"ということは、"根本的な考え方" 以前に "考えていない"です。何に対して何をしたいかをちゃんと考えてください。

「ひとくち新聞」9/5号

 めっちゃ切れてる。最初読んだ時はひでえなと思ったけど、koronekoさんにとっては、”特に何も考えず漫然と行動を決める”というのは有り得ないので、ここまで苛立ったのだろう。「何に対して何をしたいか」というのはある程度ミクロな話だけど、やっぱり自分がとる行動がより大きな文脈に適ったものなのかどうか、を問題にしている点は同じだ。

 ゲームを始めた頃は、カード揃えてプロと同じデッキをつくって、カードやデッキの種類覚えて、最善手を選び続ければ勝てるだろう、ぐらいに思ってたけど、これは完全に間違いだったことがわかった。いやはやLegendaryまでの道は遠い。

 

 ちゃんと目的を持って指しても、最初はなかなか思うようにいかないと思います。(中略)でも、それでいいんです。大事なことは目的を持って指す、ということです。目的を持っているということは、少なくとも「何をどう指せばいいか分からない」は抜け出している証拠です。ただ漠然と駒を動かしているだけでは上達できませんし、何より将棋を楽しく感じられないでしょう。まずは失敗を恐れずに、自分なりの目的を持って、一手一手指してみることが大切です。

 自分なりに目的を持つ。それで失敗したり、うまくいかなかったら、それを改善するために修正を加える。この繰り返しはとても力になります。

羽生善治のみるみる強くなる将棋序盤の指し方入門』20-21頁

 

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f:id:the_beesknees:20150928122035j:plain 三田紀房『インベスターZ』2巻

www.gamespark.jp 

 

インベスターZ(2) (モーニング KC)

インベスターZ(2) (モーニング KC)

 

 

 

「運ゲー」Hearthstone における「運」について

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 先日Mech Mageのガイド記事をしっかり読んでから、かなり勝率が上がった。現在ランク6で、ひとまずの目標であるランク5は無事達成できそう。

 いくつかガイドに従って今までとは違うプレイングをするようになったが、この辺りは一人でプレイしているだけでは絶対に変わらなかったと思う。カードゲーム経験者でもない限り、誰の力も借りずに上手くなるというのは限界があるんだと実感した。それと、WarlockやDragon Priestに負けても、相性が悪いのだからと割り切ることが出来て、イライラしなくなったも大きいと思う。

 というわけで、運について、ちょっとおもしろい記事を発見した。

2個のサイコロを投げて争う「クラップス」や、ルーレットなど、偶然に左右されるゲームで賭けをする時、実は「賭けをする行為」そのものによって、自分の勝算が変わってしまいます。2回続けて賭けに勝った人が次も勝つ確率は57%ですが、2回続けて負けた人が次に勝つ確率はたったの40%です。なぜでしょうか? 2014年に発表されたある研究によると、人はこうした場合、自分の勝率が平均値に戻るのではないかと不安に襲われます。つまり、1度賭けに勝つと、次の勝負では負ける可能性が高いと感じるので、勝ちが続いている間は、より手堅い賭け方を選ぶことで、リスクを下げようとするのです。

ツイてる人は何が違う?「幸運」を科学で解明

 面白かったのは太字の部分。普通に考えれば、前回の結果とその次の勝負は無関係なのに、精神状態に左右されて行動が変化し、次の勝負に影響が出てしまう。

 これに似た話が、pokerにおけるティルト(tilt)である。ティルトとは「プレイヤーが合理的な判断ができなくなり、感情にかられた行動をとるようになってしまった状態」を指す。ティルトには、先述した運の記事のように賭金を取り戻そうとより倍率の高い(=勝ち目の薄い)勝負に出てしまうアグレッシブなティルトと、あまりに内気で臆病になり、勝負どころでも踏み切る勇気が出ないパッシブなティルトがあり、後者のティルトの方がより厄介ということだ。

いずれにせよ、ラダーのような連戦において平常心を保つことは重要だろう。私を含め、カッカしやすいと自覚している皆さんは、負けが続いてる時は運ゲーじゃねえかと悪態をつく前にティルトに陥っていないかを疑って、少しゲームから離れてみましょう…

 

運についての記事

www.lifehacker.jp

tiltの解説の引用元

ja.pokerstrategy.com

『宝島(Treasure Island)』ナショナル・シアター・ライヴ2015

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 毎年ナショナル・シアターによる舞台をいくつかピックアップして世界中の映画館で上映する「ナショナル・シアター・ライヴ」。今月はロバート・スティーヴンソン原作、ポリー・フィンドレー演出による『宝島』であった。

 脚本を手がけたブリオニー・ラヴェリーによって、主人公ジムをはじめ、何人かの役柄が女性へと変更されていた。”Girls need adventures, too”というラヴェリーの言に異論はないし、この翻案は作品の雰囲気にはまっていたように思う。元々原作でも子ども扱いされるジムは、女の子だということで更に軽く扱われる。これはジムが大人に対して抱く反骨心をより引き立てていた。なによりジム役のパッツィー・フェランが素晴らしい。男の子とも女の子とも言いがたい未分化な様態を見せるが、かといって子役のような未成熟さは感じさせない。ダボダボのパンツと妙に大きな眼は往年のコメディアンのようでもある。性の変更によって原作と唯一違いが生まれているとすれば、ジムとジョン・シルバーとの関係だろうか。原作では擬似親子(父子)の関係の二人だったが、本作では父娘にとどまらず男女の関係の萌芽を匂わせるに至っている。

 とはいえ、本作最大の特徴にして見どころは、オリヴィエ劇場のセリの使い方である。ロンドンのオリヴィエ劇場は古代ギリシア風の円形の舞台を持ち、その中央に大掛かりな円形のセリを持つ。優に二、三階建ての高さはあろうセリであるが、この地下から上がってくるものが毎回異なるのだ。時にそれはうらぶれた宿屋であり、宝島の地下洞窟であり、そしてジェリー・ルイスの『底抜けもててもてて』を思わせる(それを引用したゴダールの『万事快調』でもよいが)船体をそのまま輪切りにしたような複数階層を持つセットまでもが地下から現れる。

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写真:ジェリー・ルイス『底抜けもててもてて(The Ladies Man)』1961


 『宝島』は海洋への冒険譚であり、普通に考えれば水平移動の物語だが、その一方で星を見上げ、宝島の「インナースペース」へ潜入していく縦の物語でもある。その意味でセリを最大限に活用し、縦への運動を示した本作の解釈は正しい。この舞台装置を作り上げたアート・ディレクターと、それを許したナショナル・シアターの予算規模に脱帽である。

 

www.ntlive.jp

Mech Mage Deck Guide – After TGT Release

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Mech MageでLadderを登ろうということで、色々なサイトを巡っていたら、現環境におけるMech Mageについての素晴らしいガイド記事を見つけた。

hearthstoneplayers.com

微に入り細を穿ったガイドで非常に勉強になったが、なかでも特に参考になった点をいくつか挙げておく。

  • Fel Reaverによるカード切れが原因で敗北することは確かにあるが、それ以上にFel Reaverは勝利をもたらしてくれる。
  • Dr. Boomが生み出すBoom BotもMechであることに留意せよ。
  • なぜ今、Mech Mageなのか?現行メタがMech Mageにとって非常に都合のいい状況だから。人気のPatron、Secret Paladin、Druidには相性がよく、Zoo、Handlock、Control WarriorといったMech Mageが不得手なデッキが総じて現環境では使われなくなっている。(ただしメタ上位のDragon Priestには滅法弱い)

マリガンの指針については

  • Hunter/Mage/Pally:アグロベースだと思われるので、こちらもアグレッシブに。先行、つまりコインがない場合は、1マナミニオンが必要。2マナミニオンが手札にあっても一枚だけ残してマリガンせよ。
    Warrior:展開が遅い分、バリューの高いカードが必要。先行でも1マナは必要ない。Snowchugger、Piloted Shredder、Annoy-o-Tron、Mechwarperといった中盤で役立ちテンポを取れるカードをキープせよ。
  •  Druid/Priest:Warriorのケースと似ているが、もう少しアグレッシブに。とはいえClockwork Gnomeはいらない。キープするのは、先行で他に1マナミニオンがないときぐらい。他の1〜2マナミニオンをキープせよ。
  • Warlock:相手がどのタイプのデッキでも不利なマッチアップとなる…マリガンは基本的に上と同じ。

え、相手によっては1マナ必要ない、あるいはGnomeはいらない、というのは意外…今度試してみよう。

続いて、よくあるマッチアップ

  •  Dragon Priest:不利なマッチアップだが勝ち筋はある。注意しなければいけないのはHoly NovaとCabal Shadow Priestで、これらを上手く消費させることができればほぼ勝ちである。Reaverを出す前に、Goblin Blastmageを餌にしてこれらを使わせることができればよい。とはいえ、Reaverを出し惜しみしろということではない。序盤で出して相手が対応できなければフェイスを殴れる。またReaverを警戒させてHoly Novaを打つのを控えさせるメリットもある。もうひとつの勝ち筋はArchmage Antonidas。相手のデッキは遅いので、その間にスペアパーツやFrostboltを貯めて、Antonidasとのコンボで大量のFireballを入手せよ。
  • Secret Pally:どちらがボードコントロールできるかが勝敗を決める。劣勢の中で出されるMysterious Challengerは怖くない。相手のデッキが完璧に回れば勝ち目はないが、それについては諦めよう。
  • Druid:Mech Mageが有利なマッチアップ。ボードコントロールに努め、最終的にこちらが出したFel Reaverに対して向こうがBig Game Hunterで応じられなければ、こちらの勝ち。
  • Patron:ひたすらボードにプレッシャーをかけ続けよ。武器を止められるSnowchgger、Tronが大活躍。Frostboltもフェイスへ。Reaverを早く出し過ぎるな。Executeでやられてしまう。
  • Hunter:ボードコントロールに努め、Reaverを出せ。盤面を制圧している状態でReaverを出せれば勝ち確。相手がFace Hunterの際は、Tronをすぐに出さないほうがいい。相手のペースが緩んだ時に出てくるWolfriderやArcane Golem相手にブロックさせたい。

 また、締めに書かれていたこともなかなか興味深かった。この箇所だけざっと訳すと

... but it does actually hone some skills a lot of Hearthstone players need to work on. Making value trades while maintaining the board is something most players ignore for the more powerful decks like Handlock or Patron. I personally love this style of deck as I feel it has more interaction and a higher thought process than just play on curve and drop the biggest minion you can each turn. 

 

…だが、なんとこのデッキ [Mech Mage] によって、多くのプレイヤーが習得に励むべきスキルを磨くことができる。ボードを維持しながら有利な交換を仕掛けることは、HandlockやPatronのような強力なデッキを使っている際にはほとんどのプレイヤーが気にかけていないことだ。私がこの手のデッキを好むのは、毎ターンただマナカーブに沿いながら一番大きなミニオンを場に出していくプレイよりも、ずっと双方のせめぎ合いや高度な思索を必要としていると感じられるからである。

要は、 Mech Mageをプレイすれば基本的なHearthstoneの対戦スキルが身につきますよ、ということらしい。ならば尚更、今シーズンはMech Mageで頑張ったほうが良さそうである。

 

以下は、他に参考にしたデッキガイド。ただし、現環境に合わせて書かれたものではなく、どちらもそこまで詳しく書かれているわけではない。

hearthstone.metabomb.net

www.hearthstonetopdecks.com

The Grand Tournament、あるいは poor man's Hearthstone

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 TGT実装後、Hearthstoneがめちゃめちゃ面白い。

 前回の拡張のBRM以降はPatron Warrior一強が続き(ほんとに別格だった!)かなり萎えていたのだが、TGTによりメタ環境が大きく変わった。Patronと対をなす壊れSecret Paladinの登場がもちろん最大の要因だが、シクレパラ流行によって展開が早くなったことでレイトゲームまでもつれ込むことが少なくなり、重いカードの出番が減ったことが個人的には有難い。

 要は、大型のLegendがそんなになくても、現環境で十分戦えるデッキが組めるようになったということである。これは資産の少ないプレイヤーにとっては大きな追い風で、実際に色々なデッキを組んで楽しめている。

 

 更に、ついにRanked Playで賞品がもらえるようになったので、今までおざなりにしてきたLadder Climbを頑張る意味も出てきた。

 シクレパラやパトロンを始め、いくつかデッキを試してみたが、一番楽しかったのはMech Mageなので今月はこれでLadderを登ってみようと思う。一応Legendary到達を目指すけど、Golden Epicが賞品でもらえるRank5が現実的な目標だろうか。

 

 使用デッキはこちらのBlood Knightを別カード(今はTinkertown Technician)に置き換えたもの。シクレパラとのmatch upが増えてきたら元のレシピ通りにするつもり。

気分転換に、このTempo Mageもいいし、このWarlock Zooも独特でちょっと使ってみた感じかなり楽しい。