ハースストーンプレイヤーズ記者が選ぶ ベストデザインカードTOP5(Five Well-Designed Hearthstone Cards)
Hearthstone PlayersのNuba氏が選んだ、優れたカードデザインを持つ5枚を紹介します。この5枚というのは、氏がブリザード社のゲームデザイナー職に志願した際にブリザード側から出された課題だそうです。文章はプレイヤーではなくブリザードの開発者に向けて書かれてるところは注意してください。TOP5というかたちですが順位はなく、5つの理由をもとに各々一枚ずつ選んだようです。元記事は氏が提出した志願書の全文となっているので、興味がある方はそちらをどうぞ。
《傷を負った剣匠/Injured Blademaster》
「《傷を負った剣匠》は私が最初に思いついたカードでした。ーこのカードはシンプルでバランスの取れたものですが、将来的に多様なデッキ構築のスタイルを切り開いてくれます。このカードの優れた点はそのパワーや汎用性ではなく、将来的に開発者が、新しい、そして面白い戦術のためにこのカードを使うことを期待できるということにあります。《Circle of Healing / 回復の輪》から大いに恩恵を受けるミニオン群のデッキを考えたことがありますか?きっとあるでしょうね、では《Ancestral Healing / 祖霊の癒し》はどうでしょう?このカードが《Armorsmith / 鎧職人》のような能力を発動できるということについてはどうですか?《Resurrect / 復活》で考えてみた人はいますか?《傷を負った剣匠》がうまくデザインされたカードだというのは、それがブリザード社に対して将来の戦術デザインの可能性を開き、上述した発展性においてカードスロットを妥協することなく、さまざまな、そして楽しいデッキを可能なものにしてくれるからです。」
《サンダー・ブラフの勇士/Thunder Bluff Valiant》
「「激励/Inspire」は非常に楽しいメカニズムで、私はそれがゲームから退場するべきではないと信じています。可能な選択肢の数はすべてを検証するにはあまりに多く、私はこのカードのような、同じターンに他のカードを使ったり自分のヒーローを守ることを可能にする一方で、勝利にむけて雪だるま式に大きくなりうる、とはいえ対戦相手に対応する時間も与えないでゲームを壊すようなことはない、構築に使えるカードが大好きです。《サンダー・ブラフの勇士》はレイトゲームのフィニッシャーがどうであるかの完璧な例です。当然ながら、《頽廃させしものン=ゾス / N'Zoth, the Corruptor》のような、同じくらい優れたフィニッシャーであるカードは他にもたくさんあります。しかし私は、異なる戦術には異なる選択肢を考えることを好みます。そしてこれこそが《サンダー・ブラフの勇士》に対する私の見方です。私がこのカードで一番好きなのは、将来追加されるカードに対して無限に思える思考の源を私達に与え、カードデザインがどうあるべきかを示してくれる点にあります。」
《おしゃべりな本/Babbling Book》
「最新の拡張版はもう一枚のカードをこの五枚のリストにもたらしました。このカードは、私が思うに、優れたランダム性の完璧な例です!《おしゃべりな本》は驚くほどすぐれたテンポ・メイジのカードです。コストは1マナですが、ゲーム後半で使えるだろうランダムなカードを与えてくれます。このカードが素晴らしいのは、ゲーム序盤でプレイでき、レイトゲームにおいて極めて価値があり、カードが得られるのはランダム効果であるためどの水準においても「壊れ」というほどではなく、ヴァーチャルなカードゲームにあって普通のカードゲームはないツールのひとつーランダム性ーを上手に採用しているからです。」
《ファンドラル・スタッグヘルム/Fandral Staghelm》
「《ファンドラル・スタッグヘルム》はその効果の強さを理由に最近ヘイトを集めているカードですが、私はこのカードもまたすばらしくデザインされたカードの完璧な例だと確信しています。《ファンドラル・スタッグヘルム》で一番好きなのは、《Nourish / 滋養》のような以前は使われていなかったカードを拾い上げ、トップティアーまで高めた点にあります。クラシックのカードはどの環境でも強いようにはつくられていません。そして《ファンドラル・スタッグヘルム》がスタンダード落ちした暁には、《滋養》もまた使われることがなくなるでしょう。しかし、私はそれでいいのだと思います。《ファンドラル・スタッグヘルム》がうまくデザインされたカードだというのは、ただ単にそれが使われていなかったカードを使われるようにしたからであり、《Mysterious Challenger / 謎めいた挑戦者》と同類のもの(とはいえ《謎めいた挑戦者》ほどゲームの健全性を脅かさないもの)だからです。《謎めいた挑戦者》は狙いは同じところにあっても、結果的にあまりに強くなり過ぎました。《ファンドラル・スタッグヘルム》はまた《妖獣の激昂 / Feral Rage》のような同じ拡張版に収録されたそこまで強くなかったカードをはるかに優れたものにもしており、「旧神のささやき」での私のお気に入りのカードです。」
《イセリアルの売人/Ethereal Peddler》
「私は戦術のローテーションが大好きです。ブリザードが最近ローグに対してしていることは、人々が関心を抱いていたものではありません。―戦術はローテーションする必要があるのです。ほとんどのプレイヤーがミラクル・ローグ用のカードを望んでいる一方で、私はこのカードが採用されるような新しい戦術が望ましいのだと最終的に判断しました。ゲームの新鮮さを保つためには、新しい戦略があちこちで登場すべきです。ローグの《Burgle / 強盗》を採用した戦術は、あまりに不安定だと言う人がいる一方で、実際的なラダーの選択肢であり、非常に面白いものでもあります。この戦術は今は「壊れ」ではありませんが、調整次第では厄介な問題になった可能性もあります。このカードを五枚のうちの一枚に選んだのは、単にいずれローテーションが回って退場していく革新的な戦術で、プレイするのが面白いからだけでなく、デジタルゲームだからこそできる仕組みを使っているからであり、このことがカードをずっとよいものにしてくれるのです!」
Nuba氏の選定理由を簡単にまとめると、
《傷を負った剣匠》:将来のさまざまなデッキ構築の可能性を開いてくれる。
《サンダー・ブラフの勇士》:より深い戦略的思考を促す、強力な(でも強力すぎない)フィニッシャー。
《おしゃべりな本》:デジタルゲームならではのランダム性をうまく活かしている。
《ファンドラル・スタッグヘルム》:能力シナジーにより、使用頻度の低いカードを実用レベルに光を当てている。
《イセリアルの売人》:新タイプのデッキ構築に寄与し、デッキのローテーションを促す。
といったところでしょうか。プレイヤー視点の、強い/弱い、使える/使えない、とはまったく違いますね。カードゲームのデザイナーになりたい!という人はそうそういないと思いますが、新しい環境でデッキを考案するときなどに、こういった製作者の立場からカードを評価する視点は参考になるのではないでしょうか。