Planning to Win
hearthstoneplayers.comに掲載されていたModorra氏によるこの記事がとてもよかった。実際の試合から判断の難しい特定の場面を取り出し、そこでの適切/不適切なプレイについての分析を施す。今までになかったタイプの記事で、大変勉強になったのでここでシェアしたい。ほんとは翻訳したいところだけど、許可をとるのが大変そうなので(許可が下りるとも思えないので)かいつまんで紹介する。
まず、Blizzcon北米予選、Reynad v.s. Bloodyface の1シーン(下の画像)。Reynadはここで手札のGrim Patronをプレイし、アーマーを22得ることに成功した。だが、筆者はこの選択が敗着だったとして、Reynadは自身のデッキの勝ち方に対する理解が及んでいなかったと述べる。なぜここでReynadはGrim Patronをプレイするべきではなかったのか。
先に判断に必要な情報を挙げておくと、ReynadはFrothing BerserkerとGrim Patron(場に残っているもの)を一枚ずつプレイ済み。対してBloodyfaceは、Emperor Thaurissanをすこし前にプレイしている。
[該当場面は1:07頃〜]
Patron Warriorの勝ち筋は二つで、Grim PatronかFrothing Berserkerによるものだ。つまりReynadの勝利は、場と手札にあるGrim Patronか、デッキに眠るもう一枚のFrothing Berserkerに依存する。にも関わらず、Reynadはその貴重なGrim Patronを不用意にプレイしてしまい、返しのターンでそのGrim Patronは、Force of Nature + Savage Roarのコンボによって一掃されてしまう。先にBloodyfaceがEmperor Thaurissanをプレイしていたことから、コンボパーツがBloodyfaceの手札に揃っていたことは予測できたにも関わらず!結果、Reynadは大量のアーマーを得る見返りに勝利のキーカードを失い、トップデッキでFrothing Berserkerを引くことも叶わず、ずるずると敗北へ向かう。確かにReynadは大量のアーマーを獲得することには成功したが、その代償は彼の勝利(と南北アメリカ大会への出場権)だった。
自分のデッキの勝ち筋を理解し、勝利への算段をつけること(まさにPlannning to Win)の重要性はコンボデッキに限ったものではない。続いて紹介された実例は同じ北米予選での phoetap v.s. muzzyの1シーンである。phonetapの仕掛けたシークレットは2つで、AvengeとRedemptionであることは判明している。敗色の濃いmuzzyが、勝利のために選ぶべきプレイは何か。
[0:46頃〜]
それはDr. Boomをプレイすることだ。もちろん、返しのターンで5点を与える手段が相手の手札にあればその時点で敗北が決まる一手であり、代わりにAntique HealbotかShadowflameを選択すれば少なくともそのような敗北は避けられる。だが、そうやって仮にこの場をしのいだとしても、ボードクリアはほぼ不可能となり、敗北は必至である。Dr. Boomという選択は、危険性は高くても、次のターンでShadowflameによるボードクリアを可能にし、ひいては勝利への可能性を残すことができる。「どうにかしてボードをクリアするか、あるいは勝利の可能性を手放すか。」muzzyが迫られていたのは実はこの二択であったということだ。(実際の試合でmuzzyは正しくDr. Boomをプレイしたが、tauntミニオンを引くことができず敗北した)
引き続き、対シークレットパラディンと対ドルイド戦の2つの場面が紹介されるが、前者は動画での解説なので聴き取りにあまり自信がなく*1、後者は9ターン目のForce of Nature + Savage Roarのコンボ対策に Loatheb はとっておきましょうというシンプルな内容なので割愛する。後者のメッセージは、自分だけでなく対戦相手も同様に戦略にもとづいて行動しているのでそれをちゃんと考慮しましょうという話。
記事の結尾には、筆者による簡単なまとめが記されていた。
- 自分がプレイしている具体的なマッチアップにおける勝ち方がどのようなものかを把握しておくこと
- ゲームで優位に立つために、自分の勝利条件と相手の勝利条件をしっかり理解しておくこと
こう書かれると簡単なことに思えるが、紹介した二例のような複雑な盤面だとどうしても安易な「最善手」に逃げがちである。そんな状況下でも勝利への道を見据えた上で行動を選択することはできるか。問われている水準は生半なものではない。
ちょっと自分の話をすると、優勢なときはそのまま勝てることが多いのだが、劣勢だとほとんどのケースで負けてしまうことに最近気づいた。何を当たり前のことを、と思われるかもしれないが、要は、劣勢の中で勝利につながるプレイングができていないということだ。敗色が濃い状況で、何の見通しもなく「最善手」をプレイしても、勝利を手繰り寄せることは出来ない。ひとくち新聞寄稿者の天野さんも「最後までゲームをやり通す。」ことが大事だと述べていたが、これは精神論というよりも、劣勢からどれだけ勝ちを拾えるか、それが勝てる人と勝てない人の差だということを言っているのだろう。ずっとそういうことを考えていたので、本記事には思わず膝を打った。とはいえ、実際に解説されたような妙手が指せるかというと、また別の問題である…